労働者災害補償保険法改正点…労働者の安心・安全を守ります。

 業務上や通勤途上における労働者の方の負傷・疾病に対する治療費の支給、障害・死亡等への保険給付、
その後の社会復帰の促進や遺族の方に対する援護を主な目的とする労働者災害補償保険法は、原則として
労働者の方を一人でも使用する事業を強制適用事業とし、使用者側の過失の有無や届出の有無を問わず、
使用者の労働者に対する災害補償責任を基礎として労働者の保護的責任を担っています。

 平成24年の労働災害による死傷者数は約11万4千人となり、平成22年から3年連続の増加となっています。
特に精神障害等に係る労災請求件数および労災給付決定件数が増加している状況です。
 ここでは、労働生活に密接に関係している労働者災害補償保険法の重要事項や改正事項をまとめてみました。

石綿(アスベスト)労災に係る「特別遺族給付金」の支給対象および請求期限が改正され
救済の充実が図られています。

石綿健康被害者のご遺族の皆様へ、給付金に関する大切なお知らせです。 …石綿(アスベスト)を吸い込んだことが原因により発症した中皮腫や肺がんなどの
疾病については、その遺族の方に労災保険法による遺族補償給付が支給されているほか、
遺族補償給付を受ける権利が時効により消滅した方に対しては、特別遺族給付金が
支給されています。
 平成23年8月30日に石綿健康被害救済法が改正され、特別遺族給付金の支給対象の
拡大や請求期限の延長が行われるなど、石綿によって健康被害を受けた方々や
そのご遺族に対する救済の充実がされております。

@ 平成18年8月29日までに亡くなった労働者のご遺族の方
…労災保険法からの遺族補償給付の請求権は5年の時効により消滅しておりますので、特別遺族給付金の
 支給対象となります。
  特別遺族給付金は原則として請求の翌月分から支給されます。ただし、平成18年3月27日から同年8月29日までに
 亡くなった場合の特別遺族年金の支給は、労災保険の遺族補償給付を受ける権利が時効によって消滅した日の
 属する月の翌月分からさかのぼって行われます。

A 平成18年8月30日から平成28年3月26日までに亡くなった労働者のご遺族の方
…労災保険法に基づく遺族補償給付の支給対象となります。遺族補償給付の請求権の時効は、亡くなった日の翌日から
 起算して5年となっておりますのでお早目に請求手続を行ってください。
  なお、こちらに該当される方のうち労災保険法に基づく遺族補償給付を受ける権利が、労働者が亡くなった日の
 翌日から5年を経過したことにより時効で消滅した場合には特別遺族給付金の支給対象となります。
  特別遺族給付金の請求期限は平成34年3月27日まで(改正前より10年間の延長)となっております。

A 平成28年3月27日以降に亡くなった労働者のご遺族の方
…労災保険法に基づく遺族補償給付の支給対象となります。
 特別遺族給付金の支給対象から外れますので、救済としては労災保険法からの遺族補償給付のみとなります。
  同じように、時効は5年となっております。


※厚生労働省による改正石綿健康被害救済法に関するホームページがございますので、 こちらをご覧ください。


※なお、石綿を原因とする病気について、発症当時に労働者でないなど労災保険の支給対象に当てはまらない
 場合でも、石綿健康被害救済法に基づき独立行政法人・環境再生保全機構からの救済給付を受給できる
 場合がございます。
 救済給付の手続は、独立行政法人・環境再生保全機構環境省地方環境事務所最寄りの保健所で行っています。


 ご連絡をいただければ、ご相談・請求手続などに対応させていただきます。

メールフォーム(ご契約前の相談もお気軽にどうぞ。)

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■石綿健康管理手帳について
 過去に石綿等を製造し、または取扱う業務に従事し、健康診断で一定の所見(両肺野に石綿による不整形陰影があり、
または石綿による胸膜肥厚があること。)が認められる場合や、当該業務に一定の従事期間がある場合は、離職の際に
事業場所在地(離職後においては、申請者の住所地)の都道府県労働局に、石綿に係る健康管理手帳
(以下「石綿健康管理手帳」という。)の交付申請をすることにより、石綿健康管理手帳が交付されます。

 石綿健康管理手帳が交付された場合には、その後無料で年に2回(じん肺の健康管理手帳については年に1回)
定期的に、健康診断を指定の医療機関で受けることができます。
 なお、石綿健康管理手帳は、所属していた事業場が倒産等により閉鎖されてしまった場合でも申請することができます。

   申請方法などの詳細につきましては、お近くの都道府県労働局または労働基準監督署にお問い合せください。
厚生労働省ホームページでも、「アスベスト(石綿)情報」として掲載されております。


労災保険率のメリット制 適用範囲を拡大する見直しが検討されています。

労災保険率のメリット制 適用範囲の見直しへ。 …現在、各事業所が納付している労災保険料は、一定の事業の種類ごとに定められた
労災保険率に応じて決められていますが、同じ事業の事業所でも作業環境や作業工程の状況、
災害防止意識の違いなどにより労働災害の発生率が事業所ごとに差があるのが現状です。

 労働災害の防止努力を促進させ事業主の保険料負担の公平性を図るため、一定規模以上の
事業について労災発生頻度に応じてその事業本来の労災保険率・労災保険料額を、最大40%の
幅で増減させる制度を、労災保険の「メリット制」といいます。

 つまり、労働災害件数が少なければ労災保険料は少なくなり、労働災害件数が多ければ労災保険料が
多くなるわけです。
 メリット制の適用を受けるためには、以下の要件を満たすことが条件となっています。

■継続事業
連続する3保険年度中の各保険年度において
 @ 100人以上の労働者を使用する事業であること、もしくは、
 A 20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、災害度係数(業務災害の起こりやすさを示す値)が
   0.4以上であること

■有期事業
建設の事業または立木の伐採の事業であって、
ア、一括有期事業の場合
 @ 連続する3保険年度中の各保険年度について確定保険料の額が40万円以上であること、かつ、
 A その3保険年度中の最後の保険年度の3月31日現在で、労災保険の適用事業となった日から
   3年以上経過していること
イ、単独有期事業の場合
 @ 建設の事業では、確定保険料の額が40万円以上もしくは請負金額が1億2千万円以上であること
 A 立木の伐採の事業では、確定保険料の額が40万円以上もしくは素材の生産量が1,000立方メートル
   以上であること

 しかし、近年これらの条件を満たしメリット制の適用を受ける事業は、年々減少してきています。
適用要件が厳しかったり要件を満たすほどの労働者の方を確保できていないなど理由は様々あるようです。
 また、業務災害が少なければその分労災保険料を安く抑えることが出来る半面、いったん事故を起こしてしまった場合、
労働者数の多くない中小規模事業にとっては保険料の負担が重くのしかかるだけではなく、労働者の方への補償や
設備の修繕等で経営を圧迫する事態にもなりかねません。

 こうした面を考慮して厚生労働省では、以前まで「100万円以上」であった確定保険料の要件を一括有期事業、
単独有期事業ともに上記のように「40万円以上」とし、また、一括有期事業の確定保険料額が40万円以上
100万円未満の場合の保険料増減幅を「40%」から「30%」とするなど、より小規模の事業場にもメリット制の
適用を拡大すべく改正を重ねているところです。

 メリット制の手続き、お問い合わせは所轄の労働基準監督署までお願いいたします。


新着情報&更新情報

平成26年3月23日更新しました…年金法改正点
国民年金の任意加入中の保険料未納期間が合算対象期間に算入されることになります。
平成26年3月14日更新しました…給与計算サポート
今まで適用されていた育児休業期間中にくわえ、産前産後休業期間中も社会保険料が免除されます。
平成26年3月8日更新しました…労働・社会保険ニュース
新しい給料を即時に標準報酬月額に反映させる同日得喪が、60歳以上の継続再雇用者に拡大適用されています。
平成25年4月1日…労働・社会保険ニュース
会社判断が廃止され希望者全員を継続雇用制度の対象とすることが求められています。
平成25年2月28日…健康保険法・国民健康保険等改正点
外来療養、指定訪問看護での医療費についても支払い額が一定の限度額までとなるしくみが始まっています。
平成23年10月25日…人事労務管理のポイント
離職票記載内容が事実と異なる場合には補正願の提出が必要です。
平成23年10月24日…労働者災害補償保険法改正点
石綿による遺族特別給付金の請求期限が延長されました。
平成23年7月2日…労働・社会保険ニュース
一定の要件を満たせば、パートタイマーや派遣社員など有期契約労働者の方も育児休業を取得できます。
…社会保険手続
標準報酬月額の定時決定等において、保険者算定が適用される場面が追加されています。
…労働・社会保険ニュース
事業主と同居の親族・家族従業者の方の雇用保険、労災保険への加入について、その基準をまとめました。
…人事労務管理のポイント
東日本大震災にかかる休業手当・労災保険などへの対応を、厚生労働省発表のQ&Aからまとめました。
…年金法改正点
東日本大震災に対処するため特別に施行された、年金に関連する主な法律をまとめました。
…年金法改正点
障害年金における子の加算額および配偶者に係る加給年金額の受給要件が緩和されました。
…労働・社会保険ニュース
年金支給の開始年齢引き上げが検討されます。
…人事労務管理のポイント
非常勤や契約社員、嘱託社員など短時間労働者の方の社会保険適用の基準をご説明いたします。
…人事労務管理のポイント
退職する労働者の方から請求があった場合には、使用者は一定の事項を記載した退職証明書を遅滞なく交付しなければなりません。
…労働・社会保険ニュース
勤務先の労働保険加入状況をインターネットで確認できるようになりました。
…人事労務管理のポイント
国民年金保険料は、退職(失業)による特例免除制度があります。
…労働・社会保険ニュース
事業主が雇用保険の被保険者資格取得の届出をしなかったことにより雇用保険に未加入のままであった従業員の方については、一定の要件を満たすことにより2年を超えて過去にさかのぼり被保険者期間として認められます。

■法律改正や保険料率等の改定、その他人事・労務に関する情報を更新していきます。


各法律改正点

社会保険労務士 山田泰則

社会保険労務士 山田泰則 企業と働く方の幸せのために頑張ります。さいたま市、戸田市、川口市、蕨市を中心に活動しております。
経営者の方のみならず、従業員の方や退職された方にとっての身近な相談者であり続けたいと考えています。
どうぞお気軽にお声を掛けてください。


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人事労務管理のポイント