雇用保険法改正点…失業や育児休業に関する給付などの法律です。

 雇用保険法は私達が置かれている経済情勢や雇用状況等が強く反映されており、そのため数ある労働法の中でも
頻繁に改正が行われる法律です。
 一番のメインである基本手当(失業手当)については毎年8月にその給付額の算定のための金額変更が
行われているほか、育児休業関連の給付のように受給まで非常に長期間かかるものもあり、私自身もつねに
気を使っている部分です。

@現在、休業開始前賃金の50%が支給されている育児休業給付について
 1歳未満の子を養育するための育児休業をする場合の休業開始後
 最初の6ヶ月間に限って67%支給へ

育児休業給付金の支給方法が変更になります。 …一定の要件を満たした雇用保険被保険者の方が育児休業を開始した場合に支給
される育児休業給付金について、現行では休業開始前賃金の50%が支給されていますが、
1歳未満の子を養育するための育児休業をする場合の休業開始後最初の6ヶ月間について
その給付割合が、休業開始前賃金の67%へ引き上げられます。
平成26年4月1日からの施行予定です。

 現在の育児休業取得率は女性の80%強に対して男性はわずか2%にすぎず、
厚生労働省も取得率向上をめざし様々な対策を講じてきました。
 今回の育児休業給付の拡大には、所得が減るとして今まで育児休業を取ろうとしなかった男性の取得を促進する
狙いもあるようです。

A教育訓練給付金の内容が拡充され、また、教育訓練支援給付金が創設されます。

育児休業給付金も支給期間が延長されます。 …受講費用の2割が支給され給付上限が10万円と定められている現状の
教育訓練給付金について、中長期的なキャリア形成を支援するため、専門的・実践的な
教育訓練として厚生労働省が指定する講座を受ける場合に、以下の拡充が行われます。

(1) 給付割合が受講費用の4割に引き上げられます
(2) 実際に資格を取得したうえで就職に結びついた場合には、受講費用の2割が追加的に
  支給されます
(3) 1年間の給付額上限は48万円となります
(4) 給付期間は原則2年とし、資格取得につながる場合等は最大3年までとなります
(5) 対象者は2年以上の被保険者期間を有する者ですが、2回目以降の給付申請の場合には10年以上の
  被保険者期間が必要となります

 また、新たに「教育訓練支援給付金」が創設されます。
 この給付金は、45歳未満の離職者の方が上記の教育訓練を受講する間に、離職前賃金に基づき算出された額が
給付されるもので、目安としては失業給付の半額程度となっています。

 なお、教育訓練給付等に関する改正は平成26年10月1日施行予定となっており、今後の修正もあり得ます。

B被保険者の適用範囲が拡大改正されました。

雇用保険の被保険者になる条件が緩和されました。 【改正前】
・6ヶ月以上の雇用見込みがあること
・週所定労働時間が20時間以上であること
【改正後】
31日以上の雇用見込みがあること
・週所定労働時間が20時間以上であること

改正による留意点
1 適用範囲拡大により、例えば2ヶ月の雇用契約期間の労働者でも雇用保険の被保険者となることが出来ます。
  しかし、現在、基本手当(失業手当)を受給するためには、原則として離職日以前2年間の間に
 被保険者期間が12ヶ月以上必要となっています。
  仮にこの労働者の2ヶ月間の雇用契約期間の前後に、他社での雇用保険の被保険者期間がない場合には、
 「せっかく2ヶ月間雇用保険に加入し、雇用保険料が給与から控除されていたにもかかわらず基本手当
 (失業手当)を受給出来ない。」という事態の発生も予想されます。
 基本手当の受給資格を得られない離職者が発生する可能性が高いということです。

  離職者の方にとっては離職後の生活設計に重大な影響を及ぼすこともあるため、事業主の方は
 雇用保険加入時に十分な説明をすることが必要です。

2 要件緩和により労働者のほぼ全員を雇用保険に加入させなければならない可能性が高まるため、
 総務・人事担当者の方にとって、その事務処理が大きな負担になっていると思われます。
  そこで負担軽減のため、平成22年4月1日以降に雇用保険に適用されることになった方の
 雇用保険被保険者資格取得届の提出について、いままで必要とされていた以下の添付書類が
 不要となりました。
 ・雇用契約書(雇入通知書等) ・労働者名簿 ・出勤簿 ・賃金台帳 など

   ただし次のいずれかに該当する場合には、従来どおり添付書類が必要です。
   イ 事業主として初めて被保険者資格取得届を提出する場合
   ロ 届出期限(被保険者となった日の属する月の翌月10日)を過ぎて提出する場合
   ハ 過去3年間に事業主の届出に起因する不正受給があった場合
   ニ 労働保険料の納付状況が著しく不適切である場合 


新着情報&更新情報

平成26年3月23日更新しました…年金法改正点
国民年金の任意加入中の保険料未納期間が合算対象期間に算入されることになります。
平成26年3月14日更新しました…給与計算サポート
今まで適用されていた育児休業期間中にくわえ、産前産後休業期間中も社会保険料が免除されます。
平成26年3月8日更新しました…労働・社会保険ニュース
新しい給料を即時に標準報酬月額に反映させる同日得喪が、60歳以上の継続再雇用者に拡大適用されています。
平成25年4月1日…労働・社会保険ニュース
会社判断が廃止され希望者全員を継続雇用制度の対象とすることが求められています。
平成25年2月28日…健康保険法・国民健康保険等改正点
外来療養、指定訪問看護での医療費についても支払い額が一定の限度額までとなるしくみが始まっています。
平成23年10月25日…人事労務管理のポイント
離職票記載内容が事実と異なる場合には補正願の提出が必要です。
平成23年10月24日…労働者災害補償保険法改正点
石綿による遺族特別給付金の請求期限が延長されました。
平成23年7月2日…労働・社会保険ニュース
一定の要件を満たせば、パートタイマーや派遣社員など有期契約労働者の方も育児休業を取得できます。
…社会保険手続
標準報酬月額の定時決定等において、保険者算定が適用される場面が追加されています。
…労働・社会保険ニュース
事業主と同居の親族・家族従業者の方の雇用保険、労災保険への加入について、その基準をまとめました。
…人事労務管理のポイント
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…年金法改正点
東日本大震災に対処するため特別に施行された、年金に関連する主な法律をまとめました。
…年金法改正点
障害年金における子の加算額および配偶者に係る加給年金額の受給要件が緩和されました。
…労働・社会保険ニュース
年金支給の開始年齢引き上げが検討されます。
…人事労務管理のポイント
非常勤や契約社員、嘱託社員など短時間労働者の方の社会保険適用の基準をご説明いたします。
…人事労務管理のポイント
退職する労働者の方から請求があった場合には、使用者は一定の事項を記載した退職証明書を遅滞なく交付しなければなりません。
…労働・社会保険ニュース
勤務先の労働保険加入状況をインターネットで確認できるようになりました。
…人事労務管理のポイント
国民年金保険料は、退職(失業)による特例免除制度があります。
…労働・社会保険ニュース
事業主が雇用保険の被保険者資格取得の届出をしなかったことにより雇用保険に未加入のままであった従業員の方については、一定の要件を満たすことにより2年を超えて過去にさかのぼり被保険者期間として認められます。

■法律改正や保険料率等の改定、その他人事・労務に関する情報を更新していきます。


各法律改正点

社会保険労務士 山田泰則

社会保険労務士 山田泰則 企業と働く方の幸せのために頑張ります。さいたま市、戸田市、川口市、蕨市を中心に活動しております。
経営者の方のみならず、従業員の方や退職された方にとっての身近な相談者であり続けたいと考えています。
どうぞお気軽にお声を掛けてください。


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